生花の概説
「生花」と書いて当流では「せいか」と音読します。一般には「いけばな」とも訓読されますが、いけばなは後述する「自由花」をも合わせたいけばな全般を示す広義な呼称とされています。「せいか」と読む場合は、古典的で花型の定まった伝統的な花を指します。自由花と区別するうえで、格式のある花、あるいは格を備えた花という意味の「格花」(カクバナ)という名称もあり、格式の中に植物の自然の姿を活かすという意味で「活花」(かつか)という名称も用いられますが、現在では主に「生花}(せいか)と呼ばれることが多くなっています。
当流は、時代の流れにそって若干の変様を加えながらも、一世家元が基盤を完成した生花の花型を大切に受け継いでいます。基本花型は三才型、陰陽型、五行型の三つに大別されますが、これを習得することは、奥の深いいけばなの魅力を知る第一歩となります。
三才型
三才型は最も基本となる花型です。「才」という字には「働き」という意味があり、「三才」とは天、地、人という宇宙の中での三つの大きな働き手を示します。人間は天地自然と対立し、これを征服する存在ではなく、天地自然に順応すべきものと考えます。さらに進んで万物を育む天地のはたらきに参加するものであります。天地のはたらきには無限の調和と目的をもった法則性が含まれますが、それは人間の世界にも共通であると考えました。そこで天を司る枝を「真」とし、人を司る枝を「体」とし、地を司る枝を「留」と称しました。天(真)と地(留)の間に人(体)が配され、調和のとれた一つの小宇宙をあらわすわけです。
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陰陽型
陰陽とは日陰と日当りに代表されるような相反する性質をもつ二種の気のことです。たとえば、日が陽ならば月が陰、昼が陽ならば夜が陰、というようにきわめて素朴な概念として発展したもので、対になった二つの要素の消長によって万物の生成変化がおこると考えられたものです。いけなばにおいては、直立と屈曲、表面と裏面などのような二つの対照的な要素を花型に取り入れたものです。前述の三才型の中にその要素をさがしますと、天が陽で地が陰と考えられますから、役枝の真と留があれば花型が成立します。そこで、体の格のない花型を陰陽型としています。
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五行型
五行とは、木、火、土、金、水という万物を組成する五つの元素のことをいいます。木はから火を生じ、火から土を、土から金を、金から水を、そして水から木を生ずるというように循環して停滞することがない五つの気のことですが、これらの要素の盛衰消長によって宇宙が変化、進展するので、もしその中の一つが盛んになれば宇宙はもちろん人間の歴史もその影響を受け、逆に衰えてもまた影響を受けるという自然論でもあり、歴史観であり、哲学思想でもあります。この五つの要素をいけばなに取り入れたのが五行型です。役枝は次のように配当します。真は燃えるような火性を、体は樹木の木性をあらわし、受は丸く形づくって凝縮性のある金性を、留流しは水性を、そして留は土性をあらわします。
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役枝と不等辺三角形
三才型には真・体・留、陰陽型には真・留、五行型には真・体・受・留・留流しの役枝がそれぞれ備わっていますが、いずれの花型でも、辺の比率が3、4、5の不等辺三角形に役枝を配置するのが基本となっています。通常「古流」では、正方形を対角線で二分した二等辺三角形に役枝を配置するのですが、当流ではアンバランスではあるがより美しさのある不等辺三角形のほうを基礎としています。それによってより自然を取り入れやすい花型となったのです。当流伝書の「活花大意」には「格を標準とするものは、植物の自然そのものの性に従うの法にして、即ち五行の法たり、このところにおいて植物自然の配置は必ず不等の三角なるもの、またその枝を配置するの組織は三、四、五の比例をなすもの、このところにおいてそのものの理を備いしめ、花型を作成し、もって格構の花といふなり」と記されています。また、「花形を立体になさしめるがために、正面断面とも不等辺三角形を要す」とあるように、正面からだけでなく、上から花型を俯瞰した場合にも、図のように3、4、5の格をはずしてはならないとされています。
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本勝手と逆勝手
生花では、花型の向きによって本勝手(右勝手)と逆勝手(左勝手)の区別があります。左の図のように向かって右に留の枝が伸びているものが本勝手、逆に左へ留の枝が伸びているものが逆勝手です。稽古では枝どりの具合いによって自由に決めますが、床の間をはじめ、飾る場所に合わせる場合は、花を照らす光が左右どちらから差し込んでくるかによって決めることが多くなります。右方から光が入る場合は本勝手いけ、逆に左方から光が入る場合は逆勝手にいけます。
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(株)敬風社「日本古流いけばな」より
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